・*不器用な2人*・
第37章/文化祭の終わり
店じまいを促すアナウンスが流れる頃、店番をサボっていた鈴木君たちがゾロゾロと帰ってきた。

彼らは辺りを見渡して「あのブスたち帰ったの?」と私に訊ねて来る。

「随分と前に帰ったよ。」

私が時計を見ながら呆れ半分に答えると、鈴木君は興味なさそうに頷いて準備室へと入って行った。

全校生徒はそのまま体育館へ移動して閉会式に参加することになっていたけれど、私は教室から体育館までの通路を抜けて、保健室へと向かった。

扉をノックして中へ入ると、保険医さんは珍しく留守だった。

1つだけカーテンの閉まっているベッドがあった。

私は来室記録で彼の名前を確認してから、カーテンを無言で開けた。

横たわっていたものの寝てはいなかった木山君は、すぐに私へと視線を向けた。

「閉会式行かなくていいの?」

小声で訊ねられ、私は無言で頷いた。

木山君と並び合ってベッドに腰を下ろし、暫くは無言が続いた。

先程まで寝ていたのかいつもより明らかにテンションの低い木山君は、前髪を触りながらボーッとしていた。

「1日中保健室にいたの?」

私が訊ねると、木山君は無言のまま頷いた。

「そんなに具合悪かったの?」

そう聞くと今度は首を横に振り、それからまた怠そうに俯く。

「…具合悪いとかそういうのじゃなくて、気分が乗らなかったっていうか。
みんなと同じテンションにできなかったから。
1人だけ落ち込んでるのも嫌だったし、周りに迷惑かけたくなくって。
ここでボーッとしてた。」

ボソボソと喋る木山君を初めて見たけれど、その自信のなさそうな態度が少しだけ淳君と重なって見えてしまった。

お兄さんのような彼にもそういう日があるのかと、少しだけ意外だった。



夕陽が窓から差し込む頃、閉会式が終わったのか少しずつ校舎に騒がしさが戻り始めた。

「私、HR行ってくるね。」

そう言ってベッドを立とうとすると、不意に腕を掴まれた。

振り返ると、木山君の片眼が此方を見ていた。

「来てくれて、有難う。」

木山君は低くざらつく声でそう言うと、ゆっくりと笑った。

返す言葉が咄嗟に思い付かなかった私は、曖昧に笑って駆け足で保健室を後にした。

教室へと続く廊下を走りながら、たくさんのことがあった今日1日を思い返していた。

私は成長できただろうか。
私は成長しているだろうか。

息を切らして走りながら、そんなことを考えていた。

16歳の秋。

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