・*不器用な2人*・
「初めての子供が双子だったから本当大変だったよ。お腹は大きく膨れちゃうし、もう自分の身体が重くて重くて……。
出産の時だって薫は全ッ然出てきてくれないんだもん。後の淳がつっかえちゃって大変だった」

恭子さんの言葉に木山君が淳君を睨む。

「おまえそんなこと一言も言ってなかったじゃねーか!」

そう怒鳴られた淳君はそっぽを向きながら「俺だって今初めて知った」と小声で言う。

「お兄さんたちにとって薫君は実の息子だったから。私が淳君たちの母親だなんて主張できなかったの。小さい子供に向かってそんな難しいこと言うものじゃないってお父さんに止められちゃってたし」

恭子さんはごめんね、と言いながら木山君の肩をポンポンと叩く。

「でもそっか、薫もここに住むなら、私兄さんたちに挨拶に行かなきゃ」

恭子さんが思いついたように言うと、木山君と淳君の身体が固まる。

「大丈夫、お母さんが言ってきてあげるから!」

そう言って立ち上がる恭子さんの手を慌てたように木山君が掴んだ。

「俺も行くから」

彼は掠れた声でそう言うと、両目で恭子さんを見上げた。



「ロクな思い出がないし、死にたいくらい嫌な想いもしたけど。
ずっと育ててもらったんだし、今すぐ捨てられるような親ではないから……」

木山君はそう言いながら、目を何度も擦った。

「俺が龍一の代わりになれなかったこととか、思い通りに育ってあげられなかったこととか……母さんたちの悲しさを全然取り除いてやれなかったこととか、謝らないと……」

また泣きだした木山君の首を、めぐちゃんが背後からガッシリと抱きしめた。

彼なりに抱擁のつもりだったのだろうけれど、見事にヘッドロックばりの拘束となってしまい、木山君が「うぐ」と息を詰まらせる。

「行ってらっしゃい」

めぐちゃんに優しく言われても彼の表情が引きつっていたのは、不安や緊張の為ではなく単に酸欠なだけだったと、私は信じてる。

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