闇夜に真紅の薔薇の咲く
†第2章†
「……や。さく……や。――……朔夜」





声が、聞こえる。






ゆっくりと身体が揺さぶられて、優しそうな柔らかい声が耳朶を打つ。






とっても心地よくて、出来ればこのままこの声が自分の名をつむぐのを聞いていたいと、そんなおかしなことを思ってしまう。






夢と現の狭間でしばらくまどろんでいた朔夜は、不意に声が途切れて思わずうっすらと瞼を押し上げた。






始めはぼんやりとしか見えなかった視界が明瞭になり、少し戸惑ったようなノアールの顔が映り小首をかしげて何を思ったのか彼の頬に手をのばす。






頬に触れると、ノアールはこれ以上ないほどに目を見開き固まり、我知らず笑みがこぼれる。







朔夜はノアールの頬に触れると、不思議そうに首をかしげた。









「どーしたの……?」








自らの口から発された舌足らずな声に、朔夜は驚いて何度か瞬きを繰り返す。







ノアールはその声にやっと我に返ったのか朔夜から視線をそらすと「離せ」といつも通り淡々とした声音でぽつりとつぶやくけれど、その声は微かに震えていて触れている頬も妙に熱い。







そのことから照れていることなど容易に分かり、朔夜はくすくすと笑みをこぼした。








「かーわいい」

「……全然嬉しくないんだけど。つか、寝ぼけてないでさっさと起きろ」

「おきてるー……」








頬に触れている方の手首を捕まれ、無理やり引きはがされる。























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