闇夜に真紅の薔薇の咲く
テスト勉強が苦手な彼女は、テストなんてほとんど勘で生き抜いてきた。


流石に受験勉強は時差発狂しそうになりながらも頑張ったけれど、高校に入った今。


小テストは中学同様、ほぼ勘で今までやってきている。


テストの点が悪い時もあれば、良いときもある。全ては運次第なのだが、今回のテストはどうやら相当運がなかったようだ。


クラス中のそこかしこから、くすくすと笑う気配がする。


いたたまれなくなって机に突っ伏して深いため息をつくと、つんつんとわき腹を何かで突っつかれ朔夜はのろのろとそちらを向いた。


視界に入ったのは、交差させた腕を枕にしてこちらを見つめるルイ。


その美しく整った顔には相も変わらず薄い笑みが浮かべてある。




「ねぇ、朔夜ちゃん。最近、妙に集中力ないけどどうかした?」

「そう? 蒸し暑くなったからじゃないかな?」



手で扇ぐ仕草を見せて、朔夜は苦笑を浮かべてはぐらかす。


ストラップがなくなった一件以来、始めこそ敬語を使っていた朔夜だったのだがルイやノアールに敬語を使わなくてもいいと言われ、それでもしぶとく使っていれば仕舞いに“敬語禁止令”がくだされた。


ルイ曰く、「次、敬語使ったらお仕置きだよ!」。


彼の言う“お仕置き”が何か分からないが、ろくでもない物であることは確かだろう。


あの時の満面の笑みを思い浮かべて、朔夜はぶるりと身震いをする。


ルイが笑っていただけならばまだいい。ルイの背後で、いつもは笑みすら浮かべないノアールがあたりに薔薇が咲くような笑みを浮かべていたのは、何とも薄気味悪く恐怖を感じた。



無意識に表情を引きつらせていると、こちらをじっと見つめていたルイが「朔夜ちゃん?」と小首をかしげる。


その言葉に我に返った朔夜は、ここ数日でかなり上達した作り笑いを浮かべると首を横に振った。




「ううん。何でもない」

「そっか。……でさ、どうして最近そわそわしてるの?」

「だから――」

「蒸し暑いから、なんて分かりやすい嘘、オレに通用すると思ってる?」

「…………」



満面の笑みで返されて、朔夜はしばし言葉に窮する。









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