夜がくるよ【短編】
夕日と、それで描かれた絶望

 じりじりと沈む夕日を
 彼女は痛切な面持ちでみていた。


 僕は彼女と
 その後ろにあるオレンジを見て
 ああ、明日も晴れか、と思った。


 彼女の細い手が震えるのも
 ああ、こわいのか、と見ていた。


「夜がくる」

「地球は回ってるからね。」

「…こわい。 夜はこわいよ。」


 涙をにじませて
 彼女はうずくまってしまった。

 僕も同じようにしゃがんで
 彼女の頭をなでてやった。


「夢をみるの。嫌な夢を。 みたくないから起きていると、お母さんに怒られるわ。早く寝なさい、って。」


 静かにそう、とだけ相づちを打って
 彼女の言葉をねだる。
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