僕が君にできること
終業の呑気な音楽とともにさっさとデスクを片付け咲子と私はオフィスを出た。
会社から2駅の場所に表参道はあった。
時間もあったしゆっくり歩きながら向かった。


向かう途中咲子は湯川旬への熱い思いを語った。
湯川旬はまるで王子様のように咲子の中で思い描かれていた。
王子様とは程遠いどちらかと言ったら捨て犬?そんなテテを思い浮かべまた吹き出してしまった。

「あ~馬鹿にしてる~朋香。やな感じ~」


また吹き出す場面を間違えた。


「違うって」
「はいはい。また彼氏のことで思い出し笑いですか?次は本気で怒りますからね」
咲子は不貞腐れた。


そうだ浮かれてちゃダメだった。
彼…隼人のことを思い出した。
遠征中にも関わらずマメにメールをくれる隼人。


そういえばもう付き合って3年になる。
最近なんとなくだけど結婚を匂わすことを言ってくる隼人。
彼の中では決まっているんだろう。あとは時期だけ。


そうだよ。私だってそれを望んでた。そう先のことじゃないとお互い思ってた。
でも…正直今揺らいでる。


「見て!新しい広告また旬だよ!」


掲示板に大きく貼り出された広告にはモデルの女の人を抱き寄せる


湯川旬。


…あたなであってあなたじゃない。
金子鉄男に心を揺さぶられている。


人だかりの先にはライトを浴び仮面を被ったあの人がいた。
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