裏新築祝い
 暖かい指の感触が、唇をなぞった。

 薄く目をあけると、美しい女が微笑んでいた。

 波打つカーテン。
           開いた窓から差しこむ朝日が、彼女の短い髪を蜂蜜色に透かしている。

「おはよう、花」

凛とした声で言って、あたしを抱きしめる。

「おはよう、薫」

あたしは笑って、彼女の胸に鼻をつけた。

 毎朝ベッドで抱きあうのは、小さな頃から変わらない習慣だ。

 鳴り始めた目覚まし時計を止めて、双子の姉である薫は立ちあがった。

「行かないと」

「トシとデート?」
「結婚式の打ち合わせ」

「しちゃうんだね、結婚」

「うん」

 薫は視線をそらしてドアに指をかけた。

そういえば、と振り返る。

「今夜、新築祝いしようって。悟から聞いた?」

「今夜? 聞いてないよ」
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