キュンキュンキューン!
ダテメガネ君の純情
 サナダ君、ことダテメガネ君のフレームが机に落ちて、音を立てた。
 そこへきたのがテヅカ君。弓道部のエースだ。
真田義弘(さなだ よしひろ・十七歳・男)「え?」
 ダテメガネをなくしたサナダ君は、驚いて起きた。
 そして辺りを見回すと、誰もいないのにほっとする。
サナダ「誰か、いたような……気のせいか」
 サナダ君はきちんと扉を閉めると、教室を移動した。
サナダ「クラブ、遅れそうだ。急ごう」
 学生塔の時計台に差し込む光は、もう、西陽に近かった。
モブ「タっくーん!」
 タクトの取り巻きが騒いでいる。
サナダ「おい、またか……」

 カラーン、カラーン、カラーン!
 クラブ終了の鐘を、扉の外で聞いてしまったサナダ君。
タクト「あっれえ、サナダァ、何してんの? こんなとこで。何だよ悩みでもあんのか」
 なんだかいつもと何かが違う。その違いに真っ先に向かってくるのがタクトだ。
タクト「わあ! サナダ、いつものダテメガネは? ……あれ? サナダって、サナダって……かわいい!」
トオヤ「なに? オレよりカワイイなど、ゆるさん!」
モブ「カワイコちゃんゲキシャ!」
 タクトの声を聞きつけてエリート群がやってくる。
サナダ「オレは見世物じゃなーい」
モブ「新聞部に売ろう」
モブ「だな」
サナダ「やめーい」
 そこへクラブ活動を終えた弓道部のエースが現れた。
モブ「お、サナダのイトコだ。背高けー」
モブ「なんかたってるだけで絵になるなあ」
 彼はつかつかとやってくると、サナダを間近で見た。
サナダ「うわ」
 っと、目を閉じる。
 サナダの耳にカチャ、と柄がかけられた。
手塚雄一朗(てづか ゆういちろう・十七歳・男)「あんまり無防備に寝てるんじゃないぞ」
サナダ「お、おまえのせいだバカ!」
 彼は二の句が継げなかった。
テヅカ「残念だなー。おまえほどの男が、赤ん坊のように寝こけてるんだからな」
 手にはスマフォ。
 そこにはすやすやと幸せそうに眠っているサナダ。
 サナダイトコのテヅカは片眼をつぶると、ほほえみを浮かべた。
サナダ「おまえ――」
 絶句するサナダの代わりに、タクトが、ポソリと突っ込んだ。
タクト「本物かよ……」
モブ「この平和な空間に、ヘンタイが一人いるだけで……全部がヘンタイに見える……」
 誰がともなくつぶやいた。
サナダ「おまえら人のこといえんのか? 特にトオヤ!」
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