キスの意味を知った日

そうと分かった瞬間、恥ずかしくて顔を隠した自分が馬鹿に思えた。

そして、直ぐに開き直って再び手すりに体を預けてビールを煽った。

すると。


「晩酌?」

「はい、久しぶりに。――あ、飲みます?」


なんとなく、会話の流れでそう言う。

すると、瞳を少しだけ目を瞬かせた櫻井さん。


「くれんの?」

「冷蔵庫に美咲が置いていったのが沢山あるんで」

「――じゃぁ、お言葉に甘えて」


そう言う彼の言葉を聞いて、部屋の中に戻って冷蔵庫を開ける。

そして、キンキンに冷やしたビールをベランダ越しに渡した。

なんだか不思議な光景だ。


ゴクゴクと美味しそうにビールを飲む櫻井さん。

余程喉が渇いていたのか、一気に飲むと「あぁー」とお決まりの言葉を吐いた。

その姿を見て、思わず笑ってしまう。


「自分もオヤジみたいじゃないですか」

「風呂上りで喉乾いてたんだよ」


そう言って少し苦笑いして、またグビっと缶に口をつけた櫻井さん。

その姿を横目に、私もビールを煽る。
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