キスの意味を知った日



その声に弾けるように顔を上げる。

そして、目の前に見えた光景に瞬きも忘れた。


「おかえり」


視線の先に見えたのは、酷く不機嫌そうな櫻井さん。

自分の玄関扉の前で、まるでヤンキーのように座り込んでいた。

その足元には、煙草の吸殻が数本落ちている。


その姿が信じられなくて、そのまま足を止める。

だって。

どうして?


「なんで……」

「なんでって、お前はアホか」

「――」

「何に怒ってるか知らないけど、急に飛び出すなよ」

「それはっ」

「何かあったらって心配するだろーが」


最後に吸っていた煙草をギュッと地面に押し付けた櫻井さんはそう言って、深い溜息を吐いた。

その眉間には今まで見た事無い程、深い皺が刻まれている。

どうやら、カナリ怒っている様子だ。
< 222 / 353 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop