Sion

那由汰が自分のことを話したがらないことを知っている。
話されることが嫌いだと言うことも…。




だけど、那由汰は『親友』と言ってくれた。
なのに、そんな大事なことをなんで言ってくれなかったんだろう。




結局、湖季が思ってたよりも那由汰の近くにはいなかったということなのだろうか。
そうだとしたら悲しすぎる。




やっと分かりあえたと思った。
知らない那由汰を知って、自分から話してくれた。




でも…付き合ったことは聞いていない。
弓弦は知っているのに、湖季には伝わっていなかった。




別に知る必要なんてない。
知る権利はないだろう。




それが重要というわけじゃない。
『話してくれる』ことが重要なんだ。




「…いつからですか？」




「最近…と聞いた。だからこれから話すつもりだったんだろう。あんまり考えるなよ」




ぽんっと肩を叩かれる。
湖季は二人のレッスンが終わるまで、ぼーっと天井を見つめていた。