Sion




そしてその日、希愛は那由汰に呼び出されて音楽室に来ていた。
誰もいない音楽室はとても静かで、時計の針だけが響いている。




希愛はピアノの前に立ち、ポローンと鍵盤を押す。




初めてここで那由汰のピアノを聞いた。
とても優しくて儚いメロディーは希愛の心を揺さぶった。




あの瞬間から恋に落ちていたんだろう。




思い返すと少し前のことなのに懐かしい。




「…希愛、待った?」




と、那由汰が音楽室に入ってきた。
希愛はぶんぶんと首を横に振った。




「さっき来たばかりだよ…」




声が出て一ヵ月
今では当たり前のように那由汰と話せる。




それがとても嬉しくて幸せだった。




「優愛さん、デビューしたね。なんだか…あっという間だった気がする」




「…色々大変だった。優愛も弓弦さんも容赦なくて…でも、完成した曲はすごく喜んでくれた」



と、那由汰は少しそうに話す。




那由汰が作った曲は今までの努力の証
優愛はずっと大切に歌い続けていくだろうと希愛は思った。




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