Sion




それは突然だった。
いつものように那由汰と歩く帰り道




手を握ってお互いの温度を確かめ合っていた。
何気ない話をし、笑みを交わしていた。




すると、那由汰が急に真剣な表情になる。
希愛は首をかしげて那由汰を見た。




「…どうしたの?」




希愛が尋ねると、那由汰はゆっくりと立ち止まる。
真っ直ぐな目で希愛を見つめる。




「…家、来ない?」




初めてだった。
那由汰がそんなことを言うなんて。




付き合って少し経つけど、那由汰は自分の家に案内しようとはしなかった。
家族の話もしない。




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