Sion
そんな希愛に弓音は続けた。
「説得して、あなたのせいでとは言わないわ。なゆが決めたことなら…それでいいから。
でも、彼が本心で行きたいと願っているなら……あなたは覚悟を決めないといけないわ」
「なゆは…傍にいるって…」
ずっとそばにいると言ってくれた。
望む限り、傍にいようと。
だから離れないと思っていた。
俯く希愛に弓音はため息をついた。
「この話をしたとき、なゆも最初にそう言ったわ。その言葉が…彼を躊躇わせているのよ。
…花澤さん、ちゃんと考えておいて。なゆを送り出すか引き留めるか。私はなゆの決断に任せるつもりだから」
そう言って弓音はすっと希愛の横を通りすぎた。
そのまますたすたと歩いていった。
弓音が居なくなった場所で希愛はどうすればいいか、悩んでいた―――。