Sion




だが、那由汰本人はそういったつもりではないらしい。
紛らわしいと律花は毒づく。




「計算でしょ?じゃなきゃ、あなた変」




「計算?本気だけど?だってこんなにイメージにあった子はいない」




那由汰は細めた目で希愛を見つめる。
その目に希愛は恥ずかしくなって、目をそらしたくなった。
だが、愛おしそうに見つめる目に逃れられなかった。




湖季ははぁーっと深いため息をついた。




「計算だったらいいよ。那由汰の場合は無自覚。昔からこういう奴だから」




おかげで大変だよと湖季はつぶやく。




ある意味、天性の才能だと思う。
希愛の心をドキドキさせる。




胸の鼓動が速くなる。
止まれ止まれと心の中で思っても、鼓動の速さは収まることはない。




それと同じく、希愛の顔も赤くなる。
希愛が出会ってきた中で、こんなにストレートに言う人はいなかった。




そもそも、希愛に関わろういう人が珍しいくらいだ。
それなのに那由汰は希愛に近づいた。





< 37 / 303 >

この作品をシェア

pagetop