Sion




だが、爽が本当の兄でないことを希愛は早くから知っていた。
それは小学一年生になったばかりの時だ。
爽自身が希愛に教えてくれた。




そのときからだったのかもしれない。
希愛の想いが『慕い』から『好意』へと変わっていったのは。




爽をしれば知るほど想いは強くなる。
隠しきれなくなってきた。




そんな時、爽が一人の女の子を家に連れてきた。
―――要 理緒(かなめ りお)




爽と同じ学校に通う女の子で、教師の娘
少し大人でだけど可愛らしい一面を持つ、強い人




そんな理緒のこと、希愛は嫌いではなかった。
家に遊びに来るたびに希愛のことを気にかけてくれて、姉のような人だった。




兄のような爽と姉のような理緒
希愛にとってとても大切な人で、自分の想いが届かないことを理解していた。
言うつもりなどなかった。傍にいれるだけで幸せだった。




それなのに…想いが溢れてきた。
素直な希愛は困らせると分かっていても、想いを伝えることを選んだ。




それが希愛が10歳の時だ。
爽は22歳で理緒さんともうすぐ結婚するんじゃないかという時だった。





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