拾ってください!!《結婚しました!音々version》


「拾ってください!!」と、

油性のマジックペンで書かれた

ダンボールだけを残して、

私たちは帰る

二人の家に。



子猫を抱いて、

少し先を歩く八起さんの背中を追いながら、

もう一度さっきの場所を振り返った。



街灯にうっすら照らされて

箱の文字がまだかすかに読める。


「拾ってください!!」


私もあそこにいた。


あの夜、こんなふうに

八起さんに拾ってもらったんだ。


胸がきゅっと痛くなった。


「音々!どうした!!」


振り向くと優しい笑顔で

八起さんが手を振ってる。


< 117 / 141 >

この作品をシェア

pagetop