メインクーンはじゃがいもですか?

 神様はそのお祈りを却下した。

「ねぇ、葵。あの霧吹ってアシスタント? けっこうかっこいい顔してない? あたし、ちょっとタイプかもー。いつまでいるんだろう。何やってるのかなあ」

 目をキラキラ輝かせ、乙女の顔になるゆかりは自慢の黒髪を手の甲で後ろに払って体をくねくねさせた。

「そそそそうかなぁ、私はあんまりよくは見えないなあ。てか早く講義始めればいいのにね、ははは」

 焦った。

「しっ!」

 ゆかりが葵に、静かに! と唇に人指し指をつけた。

 教壇に目をやるとなんとそこは……

 霧吹が立ち上がり、ふんぞり返って教授と場所を交換しているところだった。

 どうぞ。とレディーライクに振る舞う教授に、悪魔の笑みを見せる霧吹。

 ほんのり教授が照れた風に見えたけど、きっと他の学生は気付いていない。

 教壇に立ち、ふんぞり返り、ぐるりと講堂の中を見回す霧吹は、なぜかそれなりの貫禄があった。

「生物学か。あぁ、そうかよ」

 さっき教授がそう言ったが霧吹の頭には響いていなかった。

 学生はその低くてハスキーな声にギクリとなる。ただの酒焼けと言ってしまえばそれはそれで聞こえが悪いだろう。

「先生! 生物とはそもそもどんな定義なんでしょうか」

 どこにでも一人はいる、はりきって発言する優等生ぶる学生。

 発言したのは女学生だ。

 そこに我も我もと便乗する媚びを売るのを得意とする学生数名は、ちらりと教授の方を覗い反応を確かめた。

 教授はにこやかに頷き、その学生らをチェックし、手元のメモ帳に何か書き込んだ。

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