メインクーンはじゃがいもですか?

「君だれ?」

 真っ黒い悪魔なのに優しい物言いは霧吹とは正反対。心なしかほっとした葵は、
 
「あ、あの、その。霧吹さんと次郎さんと一緒にここへ来て、今その、ここで待ってるように言われてあの……」

 顔はそっくりだが、雰囲気の優しくなった霧吹似のイケメンに、肩の力が抜け言葉がすんなりと出てきた。が、次の瞬間左手を持たれ、手の甲にちゅっとやられた。

 うっわー!!

 がっちがちに固まる蛙は脂汗を極限的に垂れ流す。

 くすりと笑う霧吹似は、これでもか! といった笑顔を披露した。

「修、手を出すんじゃないよ。将権の客人だそうだ」

 奥から現れた紫色のスーツのおじさんに葵の目は釘付けだ。

「ふーん。そうみたいだね、今聞いた。君、将権の物なんだ」

 一気に冷たくなる修と呼ばれた男は冷たい目で葵を眺め、くすっと笑った。

「物とか、そんなんじゃないですから!」

 人をまるで物のように! 私は物じゃない。

 憤慨する葵に余裕の笑みを見せると、一度目を閉じ、何事もなかったように紫色のスーツを着たおじさんが出てきた部屋に挨拶も無しに入って行った。

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