愛色と哀色の夜
「……無理、しないでいいよ…?多分、記憶があやふやなんだと思うから…」
どうしても言葉に出来ず思い倦ねるわたしに、女性は優しくフォローして下さいました。
「すみません…。…名前、麗亜さんって呼んでも…?」
「いいよ。ボ……私、は君…あなたのこと、麗花(れいか)って呼んでもいい?」
麗花、その響きに懐かしさを覚えたわたしは小さい頷きで応えます。
「じゃあ、麗花……ちゃん。……ごめんね、いきなりこんなことになって。本当ならボ…私の弟が来るはずだったんだけど…」
何事かを呟くと、くりくりした瞳で此方を見る麗亜さん。その瞳は少しの穢れもない純粋なもので、遠い昔に同じような瞳を見たように感じます。
麗亜さんの瞳の中で揺れるエメラルドがわたしのものだと気付くのに、そう時間は掛かりませんでした。
「…思い出したかな…?」
唇の動きだけで言うと、倒れ込むように此方に凭れる麗亜さんをわたしは避けることが出来ませんでした。わたしに凭れた麗亜さんは頬に触れると優しい、柔らかな口付けを落とします。
「…っ…」
その口付けに覚えのあるわたしは慌てて彼女の肩を押すも、体型の差で容易く抱き締められてしまいました。