注文の出来ない喫茶店【短編】
店の外に出ると高嶺は空を見上げた
そしてーーー


やはり、
自分にはゆっくりしている時間はないのだ
と、思った
確かに野菜スープの様に、急がずじっくり煮込めば良いものが作れるだろう
素材の持つ最大限の旨味を引き出せるだろう


しかし、自分はまだ途中なのだ
ぐつぐつ鍋で煮込まれている最中なのだ
煮込まれて、煮込まれて
じぶんの良さを出して行くだけなんだ
のんびりなんかしていられない
やがて、旨味を出し尽くした野菜スープに仕上がるまで、自分はもがくんだ
目一杯、もがくんだ
いつか、その日のために


高嶺は背筋をしゃんと伸ばすと
真っ直ぐ前を見据え
歩き出した


その目はどこか、
確実な未来を
見ているかのようだった





高嶺 敬二
野菜スープ 完食







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