黄金時間が過ぎるまで〜番外編
三波は小さめの身体から、大きな声で花園をしかりつけた。

花園はその被害から逃れるように、両手で耳を覆う…

「さぁ、行きましょう!みんな怒ってますよ。特に桂木先輩」

「なんだ桂木かぁーどうりで場所がバレたはず…」

「残念ですが居場所の見当は、俺にでもつきましたよ。ああ千歳先輩、毎回すみませんねーそれじゃ失礼します」

「ああ、うん」

三波に引きずられるようにして、花園が教室を出て行った。



「…全く先輩は…何度千歳先輩を口説けば気が済むんですか」

長い廊下を早足で歩きながら、三波は言った。

「人聞きが悪いなぁ…口説いているんじゃなくて、勧誘してるんだよ」

「どちらでも同じです!千歳先輩は迷惑していますよ」

「だってさー今回の演奏会、先輩が引退して音の層が薄いじゃない?千歳は戦力になると思ったんだけどなー」

「…確かに音の層は薄いです。が、ブランクのある人を入れるのは、どうでしょうね?」

「うん、その辺は大丈夫。今回の曲、千歳のオハコだから」

花園はニッコリと、三波に笑いかけた。
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