テントウ虫は、いつだって

#歌姫は今日も男前

*一ヶ月前



「ほら、あと4周ーっ!」



今日は最悪雨天候。
そのため、運動部は校内で活動中。

野球部・ソフト部・サッカー部・陸上競技部など校外活動の部活だけでなく、バスケ部・卓球部・剣道部・水泳部といった校内活動の運動部も廊下を使って練習を行っている。



「あと3周ーっ!」



バスケ部の部長が声を掛ける中、一人の一年生らしき人が先陣を切って走っていた。

先輩である2年生や3年生を追い越す程速く走る男子生徒は廊下にいる他部活の人を避けながら、スピードは変わらず進んでいく。

3階廊下を使用しているのは陸上競技部なのだが、その速さに口を開ける程であった。

ちなみにコノ1年男子生徒の入部しているバスケ部は校内十周トレーニングをしている。

おかげで部員はヘロヘロ。あの1年男子生徒の凄さがよく分かる。



「あの子速いね…」



文化系の吹奏楽部も3階にある音楽室から覗いている。



「1年生なんでしょ?」

「すごくない?陸上部も口開けてんじゃんっ」

「にしても可愛いよね、あの子。男子なのに羨ましいぃ~っ」

「だよねーっ!あ、イチカはどう思う?あの1年の子」



2年女子が後輩を見てキャィキャィ騒ぐ中、他の友達にも同意を求める。

求められた2年女子【イチカ】のフルネームは【新浪 聿歌(にいなみ いちか)】。

吹奏楽部と共同で音楽室を使っており、軽音部に入っている。



「どうって……別に、興味はない」


「相変わらずクールなことで、ほんっと音楽にしか興味ない音楽バカだもんねー?イチカは」


「どうとでも言え」



ギターのメンテナンスをしながら友人の言葉に肩をすくめるイチカは、顔色ひとつ変えずに言葉を返す。

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