テントウ虫は、いつだって
「んー、どうしようか……お、ちょっとそこのガラが悪い人ー」

「誰のこと言ってんだっ!!」

「反応してるだろうに」



男子生徒の手を引っ張り、ガラの悪そうな生徒に近づくと、イチカはさっそく話しかける。

実はこのガラの(以下略)はバスケ部のキャプテンだ。将来悪人になりそうな顔立ちだが本当は優しい。たぶん。



「こいつが怪我したようでな、保健室に連れていってくれないか?」


「ん、なんだ怕妥弥(はたみ)か。あんなに速度出してっからだ」


「はい……スミマセン」


「ははっ、そんなにシュンとするな。
捨てられた子犬みたいだぞ」


「捨てられた……」



キャプテンに保健室に行くと伝えて許可を貰うと、さっそく男子生徒は保健室に行こうとした。が、



「怕妥弥(はたみ)…って誰だ?」

「はい?」



イチカの一言で足を止めてしまう。



「怕妥弥(はたみ)は…俺ですけど…」

「え、アンタが?」

「はい…」


「へえ……。カッコいい名字だな。下の名前は?」


「小太郎です。【怕妥弥 小太郎(はたみ こたろう)】」


「小太郎……。犬みたいだ」



犬みたい、という言葉に少々ムッとした男子生徒【小太郎】の顔を見る限り、『犬みたい』がコンプレックスなのだろう。

小太郎が言い返そうと口を開くと、



「じゃあ、【コタ】でいいな。小太郎だからコタ。うん、いい名前だ」

「ー!」

「よろしくな、コタ」



柔和な笑みで握手してくるイチカに、コタの顔が少し赤くなった。

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