荒れ球リリーバー
須永先生と二人で当たり障りのない話をしてると店主が厨房から出て来て、カウンター近くに置かれた液晶テレビのチャンネルを手に握ったリモコンで替えて行った。

「中継の時間か」とテレビと時計を見比べ、須永先生が呟く。

彼の言う通り、都内に位置するドーム球場が映り誠一郎の所属する在京球団の主催試合だと解る。

誠一郎は遠征が終わって帰京した足で、昨夜私のアパートへ寄ったんだ。

「気になる?」

画面に釘付けになった私に、須永先生は問い掛けた。

「そんな事ありません」と慌てて返答すると、
テレビの液晶画面から目を逸らし目の前に置かれた烏龍茶に口を付けた後。

「全然、気になりません」

自分に言い聞かせるように呟いた。
< 128 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop