荒れ球リリーバー
私の瞳は、マウンドに上がった投球練習直前の誠一郎を捕らえた。

チクリと胸に走る苦い痛み。

ドキリと脈打つ甘いときめき。

背番号63の高身長男は、今日も私の心を翻弄する。

「なんか睨まれてる?」

須永先生の言葉通り。

切れ長の瞳は、射貫くような鋭い視線をこちらに向けている。

「青枝先生。知り合い?」

「違いますよ!」

冗談で言われた質問を慌てて否定した。

過剰な反応に、須永先生は不可思議な表情をする。

「有り得ません」

我に返って、今度は冷静に答えた。

「だよね」と小さく笑みを浮かべた須永先生を見て、安堵の息を吐く。

マウンドを再び見ると、投球練習を始めない誠一郎をキャッチャーが叱咤していた。

視線が逸れて一安心。

けど、今日のセイはなんだか変だ。
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