荒れ球リリーバー
「無理」

「即答かよ」と呟いた誠一郎は、私の答えに不満げな表情を浮かべる。

「なぁ。志乃。1回でイイからさ」

駄々を捏ねて、なかなか引き下がらない。

「……1回だけよ?」

体力のあるプロ野球選手に、一般人が付き合いきれる筈がない。

だけど、折れてあげる。

きっとこれも惚れた弱味と言う奴だ。

結局3回は致して、今度こそ本当に情事を終えた。

疲れ果てた私は、セイの右腕を枕にしてベッドに横になった。

ダークブラウンにカラーリングしたセミロングの髪をセイの左手が撫でる。

「1回で終わらなかったじゃない…」と口を尖らせ少し怒る。

「ゴメン」と困ったように笑い誠一郎は謝った。

「お土産くれたし、許してあげる」

私の返答に、セイは私を抱き寄せ、髪に口付けながら言った。

「志乃って、何だかんだ優しいよな」

それは、セイの事が大好きだからだよ。

心の中で呟いた。
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