荒れ球リリーバー
私は忘れていた。

羽山華子が、目聡い耳聡い女である事。

「あっ。すみません。間違えました。中身もイケメンですよね」

小さな反論を危機逃さない華子ちゃんは、私を茶化す。

「そんな事言ってないよ」

「志乃さん。ホント素直じゃないですね」

不貞腐れた私の言葉に、華子ちゃんは苦笑いして試合を見る。

マウンドに立つ誠一郎は、投球直前のルーティーンをしてた。

帽子のツバ裏を見つめ目を閉じ、何か呟いて深呼吸。

見慣れた光景に、華子ちゃんが訊ねて来た。

「帽子の裏って、何が書いてあるんですか?」

「球団抱負と個人目標らしいよ。ほら。あれ」

指差した先は、ライトスタンドに掲げられ、球団カラーである橙色の文字が記された横断幕。

毎年変わる球団抱負は、昨年惜しくも逃した優勝を再び手にすると言う意味を込め《奪還》。

「へぇ。じゃあ、高岡さんの目標って何なんですか?」
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