主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
酒呑童子一派の目撃情報は北に集中している。
主さまは百鬼を率いて毎夜空から探索して、発見次第殲滅してきた。
幽玄町には晴明の結界があるのでさほど心配してはいなかったが――息吹は今もちょこまかと動き回るので目が離せない。
今夜もそろそろ引き上げて息吹の元へ帰ろうかと思っていた矢先――思わぬ人物に名を呼ばれて弾けたように顔を上げた。
「十六夜?どうした?」
「今…酒呑童子が俺の名を呼んだ。もっと北だ。お前たち、ついて来い!」
突然主さまが猛烈な速さで先頭を走って行くと、慌てた百鬼たちが必死になって追いかける。
許してもいない者に名を口ずさまれていきり立ち、憤慨した主さまは手に握りしめている天叢雲に呼びかけた。
「鬼の魂が食らいたいか」
『美味いものならなんでも』
明確な答えに頷いた主さまは、恐らく酒呑童子が名を呼んだであろう地点で立ちどまり、暗闇の眼下に目を凝らす。
かなりの駆け足で来たために銀たちはまだ到着していなかったが――うっすらとではあるが、灯りのようなものがついている建物を発見して気配を殺しながら降り立ち、そこが神社であることを知った。
…辺りにはひとつ、殺気を消して息を潜めている者の気配がする。
だが酒呑童子のものではなく、目の前に引きずり出すために声を張り上げて挑発を行った。
「出て来い!それとも酒呑童子の部下は腰抜け揃いなのか?」
「なんだと!?」
まんまと挑発に乗ってしまって姿を現したのは、酒呑童子の右腕とも言われている茨木童子。
鳥居の前で立ちどまっている主さまとは違い、まるで本堂を守るようにして現れた茨木童子に違和感を覚えた主さまは、顎で本堂を指した。
「…そこに何かあるのか?」
「お前には関係ない!百鬼夜行の主よ、今度こそは我が主君酒呑童子様が覇権を握る時!あの方の手を煩わせることなく俺がお前を殺してやる!」
主さまが鳥居を潜る。
神社を守っている結界を天叢雲で切り裂き、最も恐ろしき鬼が妖しげに唇を吊り上げて――笑った。
主さまは百鬼を率いて毎夜空から探索して、発見次第殲滅してきた。
幽玄町には晴明の結界があるのでさほど心配してはいなかったが――息吹は今もちょこまかと動き回るので目が離せない。
今夜もそろそろ引き上げて息吹の元へ帰ろうかと思っていた矢先――思わぬ人物に名を呼ばれて弾けたように顔を上げた。
「十六夜?どうした?」
「今…酒呑童子が俺の名を呼んだ。もっと北だ。お前たち、ついて来い!」
突然主さまが猛烈な速さで先頭を走って行くと、慌てた百鬼たちが必死になって追いかける。
許してもいない者に名を口ずさまれていきり立ち、憤慨した主さまは手に握りしめている天叢雲に呼びかけた。
「鬼の魂が食らいたいか」
『美味いものならなんでも』
明確な答えに頷いた主さまは、恐らく酒呑童子が名を呼んだであろう地点で立ちどまり、暗闇の眼下に目を凝らす。
かなりの駆け足で来たために銀たちはまだ到着していなかったが――うっすらとではあるが、灯りのようなものがついている建物を発見して気配を殺しながら降り立ち、そこが神社であることを知った。
…辺りにはひとつ、殺気を消して息を潜めている者の気配がする。
だが酒呑童子のものではなく、目の前に引きずり出すために声を張り上げて挑発を行った。
「出て来い!それとも酒呑童子の部下は腰抜け揃いなのか?」
「なんだと!?」
まんまと挑発に乗ってしまって姿を現したのは、酒呑童子の右腕とも言われている茨木童子。
鳥居の前で立ちどまっている主さまとは違い、まるで本堂を守るようにして現れた茨木童子に違和感を覚えた主さまは、顎で本堂を指した。
「…そこに何かあるのか?」
「お前には関係ない!百鬼夜行の主よ、今度こそは我が主君酒呑童子様が覇権を握る時!あの方の手を煩わせることなく俺がお前を殺してやる!」
主さまが鳥居を潜る。
神社を守っている結界を天叢雲で切り裂き、最も恐ろしき鬼が妖しげに唇を吊り上げて――笑った。