先生、あのね。




「…………ん………」

重たい瞼をゆっくりと開けると、周りはもう薄いオレンジ色に照らされていて、少し冷たい風がもう夕方であることを表していた。

(…あ。私、マジで寝ちゃってたんだ…)

イヤホンを外しながら体を起こすと、体に何か温かくて重い感触を感じた。


「…………ん?」



違和感を感じて自分の膝を見ると。



「っっ!!!????」


私は声にならない悲鳴を上げた。


そこには


夕暮れでオレンジ色に照らされた、男の人の顔があった。



「……え、え!?え!?ちょ……」


(誰!!?)


何?誰?この人!?

女の子の膝、勝手に借りて寝てるとか…
変態ですか!!?


しかも、無駄にサラサラしてる髪が触れてくすぐったいし!



「…………ん…」


その男の人がごろんと寝返りをうった。

その時に、髪で隠れていた顔が目に写る。



(……あ、結構イケメン…)


閉じられた瞳、長い睫毛。
それに夕日に照らされてセピア色に染まった髪。


寝ているけど、この人はとても顔の整った人だ。


私は直感的にそう感じた。



それに、今気付いたけど。

私の肩に掛かっているスーツの上着。
多分、この人の物だ。



寝ている私に掛けてくれたって、それじゃ自分が風邪引いちゃうじゃん。




……変な人。
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