片想い




「やっと、会えた。」



その声で、やっと顔を上げた菜月は、驚いて声が出なかった。敏輝は、そのまま菜月の隣に腰を下ろした。



「オーナー、帰る。」



菜月は、敏輝が座ると同時に、席を立ち、店を出ようとした。しかし、とっさに右腕を敏輝に捕まれた。



「菜月、話がしたいんだ。」



腕を掴まれた菜月は、とっさに敏輝の顔を見上げた。そして、敏輝の真剣な眼差しに、腕を力なく下ろし、小さく首を縦に振ると、椅子に座った。



「オーナー、悪いんだけど、」



「分かってるよ、お客が来たら声掛けて。」



敏輝が、オーナーに声を掛けるや否や、オーナーは、店の奥に行ってしまった。



< 116 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop