片想い




「特に変なところは無いけれど、しいて言えば、本が落ちてることぐらいかな。」



敏輝は、後ろにいる菜月に声を掛ける。話しかけられた菜月は、本棚を見ると棚から溢れて収まりきらない本が下に落ちているのを見て、さっきの物音はこの音だったのかと納得するのと同時に、急に恥ずかしくなった。



そして、電話をかけた相手が敏輝だったということで、とっくに自分の気持ちは決まっていたのだと気付かされた。



「一応、今日は気を付けて、ちゃんとカギ閉めて寝ろよ。」



そう言って、帰ろうと後姿を向けた敏輝に、菜月は無意識に引き留めようと緊張から震えた声で、声を掛けた。



「待って、話したいことがあるの。」



話しかけられた敏輝は、振り向き菜月の緊張を解くように、優しく微笑えみながら、「コーヒーある?」と尋ねた。


< 128 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop