もしも僕だったら




「偶然と言う名の、運命かな」
格好つけたように言うこいつを、俺は冷めた目で見詰めてやる。
「嘘だよ、やめろよその目……」
「俺の運命の人はなー、美羽しかいねーんだよ!」
俺は丁度横を通った美羽を指差した。
美羽は唐突に自分の名前を呼ばれて驚いたのか、肩を跳ねさせて振り返る。
「え、な、どうしたの…?」
状況を把握出来ていない美羽。
「だから、俺の運命の人は美羽だって言ったの」
「え……」
俺が然も当たり前のように言うと、美羽の顔は瞬時に赤くなった。
何も言えないのか、固まったまま動かない。
純粋だなあ、もう。可愛い。
「なに、この子彼女?」
今まで口を挟まなかった俊斗も、驚いているように瞬きをしながら、俺と美羽を見比べる。
「そうだよ、可愛いだろ。美羽って言うんだ」
「へぇ……、俺、矢野俊斗。いつも裕也がお世話になってます」
俊斗は座ったまま美羽の方に身体を向けて、頭を下げる。
その時美羽も、はっと我に返り一歩下がって、「こ、こちらこそ、お世話になってます。園田美羽です。」と慌てて頭を下げた。
初々しい。
頭を上げた美羽は冷静を取り戻しつつあるのか、さっきより落ち着いたように俺達を交互に見て、首を傾げた。
「裕也君と矢野君は友達だったの?」
「嗚呼、幼馴染みなんだ。」
俺は頷いた。


< 11 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop