オオカミ少年。

「ゼリー買ってきたよ、食べる?」

「…後で食う。」

「食欲ない?」

「んー…。」

「じゃあ、寝てなよ。」

「うん。平山、手握っててよ。」

「何でよ。」

熱があっても意地悪な部分は出てくるようで、いつもみたいに笑ってそう言った。


「いい夢見られそうだし。」

トローンとした目でそんなことを言われたら、断れるわけなくて。

暖かい中田の手をギュッと握った。


「明日は来てね。」

「おう、明日までには治す。」

中田がいない学校はどこか物足りなくて、いつもよりも時間が長く感じた。


「早く治さないと何も出来ねぇし。」

「え?」

また、さっきと同じ悪戯っ子のような笑い方をして、あたしを見つめた。


「例えば、キスとか。」

中田の目はあたしの唇を捕らえていて、恥ずかしい、なんて思ったときにはもう手を引っ張られて中田の顔が目の前に。

< 139 / 152 >

この作品をシェア

pagetop