赤い月 終

下弦の月(カゲンノツキ)


今日もうさぎは笑って‥‥‥

本当にこれでいいンだろうか。

昼も夜も一緒にいて。

新婚サンみたいに、スーパーに買い物に行ったりして。

うさぎは心から楽しそうに笑っていて…

そりゃ、幸せなンだケド。
死ぬほど幸せなンだケド‥‥‥

うさぎに『闇蝕の術』のコトを、何度か聞いてみようとした。

その度に白い腕が身体に絡みつく。

『心配はいらぬ』
『妾がついておる』
と、優しい声で諭される。

イイ女ってヤツは、厄介だ。

その度に心は溶かされ、安堵の波に飲まれてしまう。

だが、日に日に大きくなる違和感の全てが、拭い去られるわけじゃない。

うさぎは優しい人。

本当に、本当に、優しい人。

それを嫌というほど知っているだけに、疑念は真実味を帯び、やがて確信に変わる。

たぶん彼女は…

きっと彼女は…

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