赤い月 終

一冊の、古い本。

雑に触れれば崩れてしまいそうな、古い本。

その冊子には、赤光をヒトとして生かす術が、確かにしたためられていた。

『闇蝕(アンショク)の術』

それは清らかさに光の力を与える術。

別に、聖人である必要はない。
多少の妬みや憎しみで解けるような、脆い術ではない。

つまり術を施された赤光が、人間として当然の清い心を保ってさえいれば、己の内に潜む『闇』を己の『光』で抑え込むことが出来るのだ。

秋時は希望を見出だした。

そしてその直後、さらに深い絶望を味わった。

効果は詳しく記載してある。

だが施術方法についてはただ一文…

『天の為し給ふもの也』

つまり神の力が必要なのだ。
やはりヒトでは無理なのだ。

諦めざるを得なかった。

あの時は。

でも、今は‥‥‥

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