私と5人の王子様。
夏休み最後の日

1


「ねえ、まだ終わんないワケ?」


「うるせえ、集中してんだよ、話しかけんな!」

盾という名の辞書…

辞書という名の盾を構える龍矢。


「ていうかさあ、信じらんないよな。」


「それ以上言ったら、攻撃を開始するわよ!」

ケシカスを前に指を複雑な臨戦態勢…通称フォックス・エレメント・ポジションへと移行させるあたし。

…素人にも判りやすく言えば、キツネのポーズである。



「夏休み最後の日なのに、
ひとっつも宿題終わらせてないとか。」


攻撃開始。

目標は目の前で仁王立ちをしている、
スプライト・マン…!

素人にも判りやすく言えば、市川草太青年である。

そして我らの手から放たれる、
血と涙の結晶、ケシカス砲…!


「「くらえええええ!!!」」


「……。」


「「…ぐぇええええっ!!!」」


戦力崩壊。

あたしと龍矢の
頭上に叩きつけられたのは
それはもう完璧に綺麗にパーフェクトにクリーンに片付けられた、
草太と奏太の問題集である。


「…ったー…」

乱れた前髪をほぐしながら双子を見上げる。

「はたかなくてもいいのに…
それに、一つは終わらせてあるもん。」

「全部終わらせてなくちゃ意味ないじゃん。
さあさ、頑張ってよね、藍。」

服にケシカスがついていないか点検する奏太。

「はぁ〜…夏休み序盤は補習。終盤はコレか。
藍はいつになったら俺らと遊んでくれんの?」

左に同じく点検中の草太。
矢張り双子か。仕草が似ている。

「あたしだって遊びたいさ…」

机上に突き返されたケシカス達を脇に払い、
ノートに突っ伏すあたし。



「じゃあ、遊びに行くか?」



「千隼!!」

背後にひょろりと現れた長身の彼の手には、
買い物帰りのビニール袋。

買い出し組が帰ってきた。

隣には小柄の遥翔がティッシュペーパーやトイレットペーパーを山のように両腕で抱えていた。
その山の陰から、首を傾げるようにして此方を覗いている。
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