君とカフェラテを
「――……俺にもコーヒー」

ん、と喉の奥を鳴らした彼が、目覚めの準備運動のように瞼をぎゅっと瞑りながら呟く。ゆっくりと開かれた見覚えのある双眸は、私の腕を引っ張るとそのまま胸に抱き寄せた。

「今、大きな声、出しそうになったでしょ?」

耳元で囁かれる声に、こくこくと頷くことしかできない。
だって彼は、最近CMでよく見掛ける若手俳優。ドラマのロケ隊が近くに来ていると小耳に挟んだばかりだった。

「すごいよ心臓。大丈夫?」

泣く子を宥めるように、背中をぽんぽんと叩くリズムが心地良い。緊張が解れた頃には、ずっと年下の彼にすっかり懐柔されていた。
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