戸田くんの取り扱い説明書
私の呼びかけには答えず、戸田くんは低い声で言った。
「てめえら、実里になにしてやがる…ッ」
「なんもしてねぇよ」
戸田くんはいつもの眠そうな目ではなく、ヤンキースを相手にガッツリ睨んでいる。
いやいやいや戸田くんキャラ崩壊だよっ!
ダメだよイケメンがそんな顔しちゃ!!
私はたまらず、また戸田くんに呼びかける。
「戸田くん……っ!」
すると戸田くんは、ヤンキースに近づいていく足を止め穏やかな笑みを浮かべて振り返った。
「ごめん実里。すぐに片付けるからちょっと待ってくれる」
「え……ぁ、うん…、…ん!?」
すぐに片付けるから!?
一体どこからそんな言葉が………ッ!?
ていうかダメだよ喧嘩しちゃ!
戸田くん停学になっちゃったらどうするのさ!!!
ボスヤンキーくんはニヤリと笑い、手首や指をポキポキ鳴らす。
「そんなこと笑って言ってられんのも今のうちだぜ? 覚悟しとけよ、と、だ、く、ん」
「黙れガキ」
その言葉を合図に、ヤンキース10人が一気に戸田くんに殴りかかる。
私はとっさに目を瞑った。