“またね。”

宝物

体育祭の翌日。

異常なほどに荒れ果てた学校。

授業になんてなるはずもなく、今日は1日中全校生徒でお片付けだ。

菜摘は玄関掃除だから、大ちゃんに会えるかな、なんて期待してたけど

くるのはやっぱり植木くん。

「おい。早く女紹介しろって」

階段の手すりにもたれかかり、菜摘を見下ろす。

入学してから会う度に言われる台詞にうんざりする。

「やだよ。女くらい自分で探して」

「うぜぇ奴だな。友達いねぇの?」

「うるっさいなーほんと」

こんなやりとりは毎度のこと。

植木くんのことはもちろん嫌いじゃないけど、『紹介』とかって本当に嫌。

するのも、されるのも。

「じゃあ今からよ、最初にメールきた子紹介するってのは?」

「男だったら?」

「死ねよお前」

「……死なねぇよ」

呆れてため息を吐いた時、ポケットの中で携帯が震えた。

…タイミングがいいのか悪いのか。
< 208 / 407 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop