“またね。”

初めて


こっそりドアを開けて外に出る。

もう11月下旬。

散歩するにはちょっと寒すぎる。

ただでさえ2人とも寒がりなのに。



「マジ寒いっ!」

大ちゃんが叫ぶ。

小刻みに震えていて、本当に寒そうだ。

「そう?菜摘あんま寒くないんだけど」

「は?お前おかしいって!」

「大ちゃん薄着だからじゃん」

マフラーにダウンの菜摘に対して、大ちゃんはマフラーにトレーナーのみ。

「このトレーナーの下、Tシャツ」

「やっぱバカだ!」

そりゃ寒いでしょ。

軽く言い合いをして、2人笑い合う。



ふと、手に冷たいものが当たった。

右手が塞がれてる。

初めて手を繋いだ瞬間だった。



ねぇ、大ちゃん。

この日から、『大輔』が『大ちゃん』になったね。



─『彼女がいる』─

もう関係なかった。

─『あなたが好き』─

それだけだった。

最低だと言われたって構わない。



私は─

この手を、決して離したくなかっただけ。


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