ある男女の恋愛事情





伊吹くんは、そういうの全然分かってない。


例えばだけど、私以外の人にもこういうことしたりするの?

考えただけで泣きたくなるから考えないけど、いつも撫でられるたび、そんな考えが浮かんじゃうんだよ。


「ん? どうした浅野。
エネルギー切れか?」

「…うん、お腹減った!」

「ぶは。そこのコンビニで肉まん買って帰っか。あ、そういえば新商品出てたよな」

「あー、『ミルクチョコまん』だっけ?
あたし牛乳大きらいだから食べれないけど、美味しそうだよね」


「ふは、お前まだ牛乳嫌い
なおってなかったんだ」

「え」

「、」



言った後、伊吹君の表情が強張った。

あたしも伊吹くんもお互いフリーズ。


〝まだ〟


え、ど、どういうこと。




い、ぶき…くん、

最初から私のこと、覚えてたの?





あからさまに
しまったという顔の伊吹くん。


その致命的なミスは痛いよ…。

だってここであたしがこの会話を繋げてもあたしが昔の傷に塩を塗るだけだし。


かと言って、伊吹くんがフォローしてもそれはそれでなんか悲しいし。

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