10年後も…〜song for you〜
「一緒に行きたかったなぁ…」
俺は何も言えず、唇を噛み締めた。
絵里も俺と同じ気持ちだということを悟った。
「健…あたしね、真琴ちゃんに嘘ついちゃった…」
「え?」
絵里が俺をじっと見つめる。
「ごめんね。あたし、健が帰国した理由を話してくれたって嘘ついたの…」
「…そっか…。別に謝ることじゃないよ」
そうだ…
絵里は悪くない…。
話さない俺が悪い。
絵里の真琴への強がりだと俺にも分かる。
「真琴ちゃんにも何も話してないんだね?びっくりした。でも健、どうして話さないの?」
絵里の言葉にギターを背負う肩に力が入る。
「言いたいけど…言えないんだ」
「健…。何をそんなに苦しんでるの?」
絵里の言葉が突き刺さる。
苦しんでる…
そっか…。
何も答えない俺に絵里は、
「真琴ちゃんは、あたしが知ってるって言った時、健から話してくれるのを待つって言ったの。その言葉を聞いて真琴ちゃんには、やっぱり敵わないって思った…」
絵里が息を吐いた。
「あたしだったら、真っ先に聞いてたかな?」
俺は、ポケットに入れていた物をゆっくりと出した。
絵里のマンションに行った時に渡すはずだった物。
「絵里…これ返すよ」
絵里は、それをじっと見つめて、
「健は、ずっと真琴ちゃんが好きだったんだよね」
絵里は、そう言って俺が渡した絵里のマンションの合鍵を受け取った。