10年後も…〜song for you〜
私達は会場に入ると、言葉が出なくなってしまった。
何故ならならば…
約3000人というお客さんが目に飛び込んできたからだ。
私達は言葉を交わすことなく互いに想っていることが一緒だった。
そして、みんなで微笑みあった。
「伊豆先生!」
私達が座席に行くと、そこには伊豆先生の姿が見えた。
「みなさんおそろいで。ご無沙汰してます」
「伊豆先生もいらっしゃったんですね?」
「はい、僕も彼から招待いただきました」
先生は昔と変わらない優しい表情でにっこりと笑った。
「健くん…やりましたね。ここまできたんですね。」
伊豆先生の言葉に、皆がそれぞれ昔を思いふけた。
私は、もちろん…
『真琴…健くん夢叶えたよ』
そうして真琴を想い、始まる前からすでに泣きそうになっていた。
すると、
「ママ?どうしたの?」
まことが心配そうに私を見つめている。
私はこぼれ出しそうになる涙をこらえて、
「なんでもないよ。ママはね、嬉しいの。これは、悲しいんじゃないの」
そう言ってにっこりと笑うと、まことが手をぎゅっとにぎってきた。
祐樹くんがそんな私達に気付き、私の肩をポンと叩いて、頭を優しく撫でてくれた。
そして、それから間もなく…
ステージの幕が開いたー