12ホール
「そうだ」
再び子供らしく笑う諳から目を逸らす。

「亥月は私の兄様になるのだな?」

「ん?まぁ…一応はな…」
車内販売のカートを呼び止め購入した焼き菓子を手渡す。

「そうか…人間の家族か…」
くすぐったそうに諳が照れる。

「…そうだな…それ食べたら少し寝ろよ?昨日もあんまり寝れてないんだろ?」

主としての力を使った上…

初めての乗り物、初めての長距離移動、
初めての家族に諳は浮かれていた。

「分かった…」
そう返事した後、暫くは車窓を眺めていた諳が寝息を立てる。

(やれやれ…)
紡衣ですら平伏すを得ない相手に、ここまで懐かれてしまった自分に苦笑いする

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