恋人ごっこ
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「どうしてって…仙崎君が好きだから…です」


一人が、まっすぐあたしを見てそう言った。
意思の強そうな目。綺麗な目だ。
じゃあ、どうして。


「なら仙崎に言えばいいじゃない。
別にあたしがいてもいなくても、告白できるでしょ?」


そんなに意思が強いなら、一人でも立ち向かえると思う。
わざわざあたしに言いに来なくたって、彼女は強い。あたしより。
仙崎に守ってもらってるあたしより、ずっと。


「…だって、先輩みたいに綺麗じゃないし…自信がないからこうやって…」


うつ向きながらそう言う彼女。
周りの子達も、自然とうつ向く。
いつの間にかリンチから恋愛相談になっている気がしないでもないが、まぁ気にしないでおこう。


「っ、せ、先輩は仙崎君のどこが好きなんですかっ?!」


違う子が尋ねてきた。
その質問に、あたしは一瞬固まった。
仙崎のどこが好き…?


「…あたしを振り回すところ。」



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