カノン




もしかしたらサナギさんは、

あたしが さっき、景さんとサナギさんの関係について色々 考えていた事に、

気付いていた…のかも しれない。


あたしを安心させるような言葉を並べ立てると、

もう1度 窓の方を指し示して、言った。






「…さ、

こんなに喋ってたら、また景に怒られるので…


リアちゃんは降りてください」




「え…?


ちょっ…」




急に降りてと言われて、焦った。


続けて、

まだ心の準備が…

と、言おうと したのだ けれど、

サナギさんは有無を言わさず満面の笑みでロックを解除し、身を乗り出して助手席のドアを開けると…、


そのまま あたしを車外へ押し出した。






「景さん、

後は よろしく お願いしますね!」




そして一言そう言い残すと、容赦なく発車する。






「う、嘘でしょ…」




あまりの一瞬の出来事に、あたしは遠ざかる、サナギさんの車を見つめながら、

思わず、声に出して呟いた。




すぐ近くに立っている筈の、景さんを見るのは怖くて…、

…勇気が、なかった。





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