花に、嵐
「花菜」

「はいぃ」

葉ちゃんの低い声に自然と背筋が伸びる。

「…“さくちゃん”って誰?」

聞かれるだろうなぁとは思ってたけどね。

まずはいろいろ気持ちを落ち着かせるために、もう氷がほぼ溶けて味が薄くなってしまった残りのアイスティーを一気に飲み干した。

朔ちゃんの存在を葉ちゃんには一度も話したことがなかった。

別に隠してたわけじゃない。
朔ちゃんと私は、単純に特に葉ちゃんに話しておくこともないほどの関係性だから。


「えっと、葉ちゃん、旺司郎のこと、覚えてる?高校のときの同級生の山内 旺司郎(ヤマウチ オウジロウ)」


「もちろん覚えてるわよ。生徒会長だったし、他にもいろんな意味で目立ってたしね。──なんでいきなり山内君?」

「うん、あのね、朔ちゃんはその旺司郎のお兄ちゃん」








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