花に、嵐
朔ちゃんはやっぱり今夜も部屋に入れてくれるつもりはないらしい。

───どういうわけか、一人暮らしを始めてから、朔ちゃんは過保護な反面、私を避けてる気がする。

知りなくはないけど、これはやっぱり“そう”なのかな。


「……朔ちゃん…もしかして、お部屋に、か、彼女が待ってる…とか?」

一番考えたくなかったことだけど、もう32歳になる朔ちゃんに恋人がいない、っていうほうがおかしいといえばおかしい。

ましてや──

思わず朔ちゃんを見上げる。

背は、160cm弱の私より頭一つ分以上は高く。

艶々とした黒い髪は、後ろに流してきっちりと整えられている。

私を見つめる瞳は冷淡にも見えるけれど、普段テレビで見せる切れ長の綺麗な黒い瞳は、笑うと垂れて、優しげに見えて、それがとてつもなく甘さを含んでいる。

それから、見た目細身の身体に、スーツをきっちりと着こなして、姿勢正しく歩く姿は、誰もが一度は目に留めてしまうんじゃないだろうか。










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