花に、嵐
「………気が向いたらね」

旺司郎の顔は見れなくて、俯き加減にそう返すのが精一杯。

あんまり似てないと思ってても、ふとした仕草とか表情とか、似てたりするから、余計見れない。



───普段はほとんど接点ないのに、誰にも言わず、気づかれなかった朔ちゃんへの想いに、最初に気づいたのは旺司郎だった。



小さい頃からほぼ毎日一緒に朔ちゃんのお部屋に出入りしていた美桜ちゃんでさえ、まさか私が朔ちゃんを本気で好きだなんて思いもしてなかったのに。

9歳の、初めての失恋をしたとき、傍にいたのは、旺司郎だった。


それからずっと、何度も失恋して、だけど朔ちゃんの前で笑って、影では泣いてた私の傍にはいつの間にか旺司郎がいた。

そのときだけ────






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